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ニューヨーク公演余話 その2

 「パガニーニ・パーソナル」の共演者、マリンバの神谷百子さんはお仕事の都合でコンサート初日の前日のお昼にニューヨーク入りされたので、それまでの私は一人で行動することが多かった。(他の人たちは皆アンサンブルのリハーサルが続いた)
前日の午前中、ニューヨーク近代美術館(MOMA美術館)がホテルから近いと聞いたので行ってみることにした。そこだけは是非見たいと思っていたので、ほんとうにラッキーだった。思い立ったら飛び出して、MOMAに着いたのが950分。10時には開くのかと思ったら1030分開場。困ったなと思ったけど横を見たら、1階の大きな美術館のショップはもう開いていた。「これはちょうどいい、先にお土産を探せる」と思い中に入った。


バッ グとか財布とか文房具とか子どものおもちゃなど、小物が多いのだけれどその一つ一つがすごく個性的でデザインが面白く、一瞬のうちに夢中になってしまっ た。アイディアがとにかく面白いのだ。そしてそこにいる色々な国からの観光客たちが皆、私と同じように夢中になって、次から次へと手にとっては驚いたり 笑ったり、そして隣で見ている外国人同士がまるで友達のように「面白いわね、これ」という感じで言葉を交わし、とにかく夢中になっている。その雰囲気が何 より面白かった。
これはしっかり考えていかないと、際限なく欲しいものが増えてしまうと警戒しながらも、何回も全体を見て回った。絵葉書も良かった。自分ではかなり絞ったつもりでレジの前に立ったのは、もう1時 間近く経ってからだったと思う。ショップの女性がレジを打っている間に、お金のことが急に心配になった。「もし足りなかったらどうしよう」とあわてている 間に合計金額が出た。持っていた紙幣を全部だし、それまでに山のようにたまっていたコインを手に乗せて出したら、一生懸命数えてくれて、コインが2個だけの手の上に残った。「ああ、良かった」と胸をなでおろして、MOMAの素敵な袋に入れてくれたのを持って、「さあ、もう美術館も開いている」とチケット売り場に向かって、コイン2個しか持っていないことに気がついた。
結局この日美術館は見られず、そのままホテルに戻るしかなかった。
コンサート後のたった1日のフリーの日、今度こそ見に行ったMOMA美術館はほんとうに素晴らしかった。内容はもちろん、その展示の仕方がほんとうに楽しませてくれる。しっかり見るにはあまりに時間が足りなかったし、もう一度来たいと心から思ったけれど、満足した。