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半年前、1年前のことが遠い昔のように感じられる忙しさの中で、ほんとうに遠い昔のことを、ふと思い出す時がある。

20年ほど前、7歳の女の子がお母さんに連れられて、「2週間前にピアノを買いました。」と、私のところにピアノを習いに来た。教える経験はなくはなかったけれど、まったく初めてピアノを弾くという子を教えたことはなかったので、習う方も緊張していたかもしれないけれど、こちらもいったいどうしようかと、内心途方に暮れた。
その頃私は、自分の奏法の面で、変えていこうとしていたことがあり、それが身につけばそれまでよりずっと、自然な演奏ができるはずだという手ごたえを感じていた。私はその弾き方を、まだ小さい女の子に最初から教えていった。
器用に弾くわけではなかったけれど、私の教えることを真っすぐ受け止めてくれて、こちらも驚くほどどんどん進んでいった。それは、私がやろうとしていることが間違っていないという証拠でもあり、うれしかった。